2017年03月31日

キム・エラン 「どきどき僕の人生」



少し前に、韓国の女性作家ハン・ガンの作品「菜食主義者」を読んだのですが、
それがとてもおもしろかったので、同じ著者の小説が読みたいと思っていました。
しかし、日本語に翻訳されていないのか見つけることができなかったので、
別の韓国の女性作家の作品であるこの本を手に取ってみました。



「菜食主義者」と同じく、「新しい韓国の文学」というシリーズです。
あらすじは下記の通りです。


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主人公の「僕」は、両親がわずか17歳のときに生まれた。
そして現在「僕」も17歳を迎えた。しかし僕の身体はもう80歳だ。
「僕」は早老病という病気で、人の何倍ものスピードで老いていき、
身体のあちこちに悪いところが出てきている。

両親は若くして「僕」を生み、たくさんの苦労をしたけれど、
精一杯の愛情を注いでくれた。
僕はそんな両親のために「物語」を書くことに決める。
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こんな風に切ない話なのですが、最後まで一気に読んでしまいました。
約500ページの大作でもありますが、長さも感じませんでしたね。



そして、この小説の後半に何気なく出てきたこんなエピソードが
とても気になりました。



赤ちゃんに対してよくする「いないいないばあ」というのがありますが、
あれは、「目に見えなくなっても消えたわけではない」ということを
子どもに記憶させるためのものなんだ、という一節です。



本当にそうなのかはわかりませんが、なんだか深いなぁと思いました。
多くの親が深い考えなしに赤ちゃんにそれをしているわけですが、
よく考えてみれば、それは多くの赤ちゃんにとって、人生初めての
「学び」になるんですよね。



その初めての学びが、「目に見えなくなっても消えたわけではない」
ということなんだと考えると、すごく感慨深いものがありました。
誰もが人生の中でさまざまな喪失体験をしますが、目に見えなくなっても、
それはどこかに存在していると考えることは、大きな救いになりますね。
私もそんな風に考えてみようと、この一節を読んで思いました。



これからも「新しい韓国の文学」シリーズを読んでみたいと思います。



評価:★★★★
どきどき僕の人生 (新しい韓国の文学 7) -
どきどき僕の人生 (新しい韓国の文学 7) -
posted by yuko at 14:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 外国文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月23日

村上春樹 「騎士団長殺し」



やっぱり今回もおもしろかったです。
不思議なことが次々に起こるので、
最後までワクワクしながらページを括りました。


あらすじはちょっと言いづらいですが、
次のような感じです。


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画家である「私」は、ある日突然妻から別れを切り出され、
ひとりで山の中の家に暮らすことになる。

その家の前の持ち主は有名な日本画家で、
「私」は彼の描いた未発表の傑作を屋根裏から発見するのだが、
それをきっかけに「私」の周辺で次々と不可解な出来事が
起こり始める。

近所に住む謎めいた男性と知り合ったり、
深夜に不思議な鈴の音が響いてきて、その音の方向を
たどっていくと裏庭に謎の「穴」が見つかったり…。
そして「私」は知らぬ間にどんどん不思議な世界に巻き込まれていき…
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読んでいる間ずっと、この先どう展開していくのだろう?
というスリルとワクワクが止まりませんでした。
この話は本当にこれで終わりなのかな?
「1Q84」のときみたいに、少し間をおいて
第3巻が出たりしないのかな?とちょっと期待しています。



評価:★★★★
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編 -
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編 -

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編 -
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編 -
posted by yuko at 17:05| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月17日

村田 沙耶香 「コンビニ人間」



昨年の芥川賞受賞作品です。
読みやすくおもしろい作品でした。
ひとことで感想を言うと、現代版異邦人、という印象です。
(カミュの「異邦人」のことです。)



文体は無駄がなくシンプルで、淡々とした感じです。
難解な言葉や表現もなく、よどみなく読むことができました。
あらすじは下記の通りです。


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主人公の「私」は、子どもの頃から「変わっている」と言われていたが、
自分では何が変わっていて何がいけないのかさっぱりわからずにいた。
しかし、そんな自分を家族が悲しそうな目で見ているのを感じ、
できるだけ「ふつう」を演じて生きるようになった。

そんな「私」は、大学生になるとコンビニでアルバイトを始める。
そこではあらゆることがマニュアル化されていて、それに従ってさえいれば
誰からも変わり者扱いされることなく、店員として店に馴染むことができた。

「私」はそんな環境に居心地のよさを感じ、18年間同じコンビニで働き続け、
他の仕事や結婚もすることなく36歳になった。

しかし、コンビニから一歩外に出ればやはり「変わり者」として
好奇の目で見られてしまう。

そんなとき、自分と同じような境遇の男性と知り合ったのをきっかけに、
いつの間にか周囲に変化が訪れ、不本意ながらコンビニを辞めることに
なるのだが…
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この小説の主人公は、変わり者扱いされることを気に病むこともなく、
「何がいけないの?」というスタンスで淡々と生きているのですが、
自分の意志でしていることを「変わっている」「おかしい」などと
声高に言われれば、たいていの人は嫌な気持ちになりますよね。



一方で、「これが普通、常識」などと、勝手に「普通」の基準を
決めてしまう人も多いと思います。
しかし、何が「普通」かは人によって違うわけで、
それを勝手な判断基準で決めてしまうのはどうかと思うし、
ましてやそれを他人に押し付けるというのは失礼で無神経なことですよね。



人やものごとを、普通とかそうじゃないとか勝手に判断せずに、
ありのままを見るように心がけていきたいと思いました。



評価:★★★★
コンビニ人間 -
コンビニ人間 -
タグ:★★★★
posted by yuko at 18:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月21日

田中慎弥 「共喰い」



何年かまえの芥川賞受賞作です。
田中慎弥さんの作品は、以前「図書準備室」も読んだことがあります。
そのとき、残酷で読みにくい描写があり、同時収録されていた
「冷たい水の羊」は読めないほどでしたが、「共喰い」もやはり
読みづらかったです。



本書は残酷というわけではありませんが、生臭いというか、なんというか、
うまく言えませんが、村上龍の「コインロッカーベイビーズ」や
「限りなく透明に近いブルー」を読んだときの苦手意識に似たものを
感じました。



まぁ、そういう残酷なものや生臭いものをありありと描くのが、
田中さんの作風なのでしょう。読むのがつらいと感じるほど生々しく
書けるのは彼の才能だと思いますが、個人的にはやっぱり苦手でしたね。



あらすじは下記の通りです。
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高校生の遠馬は、問題のある父親を持っています。
父は、セックスのときに女性を殴る、という性癖を持っていて、
遠馬の生みの母も、育ての母も、ともに被害に合っています。
そして遠馬は、自分の中にも父に似た衝動があることに気づき、
戸惑います。自分はどうするべきか、町を出て父と離れるべきか…
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そんな揺れ動く心がリアルに描かれています。
個人的には苦手でしたが、こういう作風が好き、という方もいると思います。
私は今後田中さんの作品は敬遠してしまいと思いますが…。



評価:★★★
共喰い (集英社文庫) -
共喰い (集英社文庫) -
タグ:★★★
posted by yuko at 17:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月19日

古谷田奈月 「星の民のクリスマス」



日本ファンタジーノベル大賞、というものの大賞を受賞した作品だそうです。
実は、この小説の作者である古谷田奈月さんは、私と同じ中学校の出身で、
同じ部活の一年後輩にあたるのです。



といっても、彼女は私のことなど覚えていないと思いますし、
ここに勝手にこんなつながりを書いてしまうのも問題があるかもしれないので、
これ以上は何も触れないことにします…。



さて、この小説のあらすじは、下記の通りです。

歴史小説家である「父」は、幼い娘のためにある物語を書きます。
娘はその物語がとても気に入り、ずっと読み続けていました。
そしてあるとき、娘はその物語の世界に入り込んでしまいます。
彼女を探しにさまよい歩いていた父親も。
そしてその世界の中で、さまざまなことが起こり…

という感じです。



とてもテンポのよい文章で、ぐいぐい引き込まれてしまいました。
出てくる登場人物も個性豊かでおもしろかったです。
想像力だけでこういうファンタジーの世界を描けるって素晴らしいですね。
ディズニーが映画化したらとても素敵になりそう、と、
思わずそんなことを考えてしまいました。


この作品の他に、あと二冊出ているようなので、
そちらもぜひ読んでみたいと思います。



評価:★★★★
星の民のクリスマス -
星の民のクリスマス -
posted by yuko at 16:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする