2016年01月20日

小川洋子 「いつも彼らはどこかに」



小川洋子さんの作品は、これまでに
「博士の愛した数式」「猫を抱いて象と泳ぐ」を読んだことがあり、
その美しい文章と静謐な世界観が気に入り、他の作品も読んでみたいなぁと
思っていました。


今回読んだ「いつも彼らはどこかに」は短編集。
全部で8つの作品が収録されていて、そのすべてに動物が登場します。
といっても、動物が主人公とか、極めて目立った役割を果たすとか、
そういうのではありません。



動物はごく控えめに、物語に描かれる背景のように登場し、
それでいて確かな存在感を持っています。



物語の内容は、おとぎ話のような様相を呈していて、
ちょっと不思議な話が多かったです。
雰囲気はこれまでに読んだ「博士の…」と「猫を抱いて…」と共通して、
切なくも美しいものでした。



登場人物は、孤独で物静か、そして優しさを内包しているような
人が多かったです。読書家として知られる爆笑問題の太田光は、
村上春樹の作品について「登場人物に人間味がない」との理由で
否定的な見解を示しているようですが、ある意味ではこの作品の
登場人物も人間味はないかもしれません。



なんだかフワっと浮いたような、透けて見えるような、
どこか別の世界からうっかり迷い込んでしまったんじゃなかろうか、
と感じるような雰囲気を持っています。



ただ、前述したようにこれはおとぎ話のような作品なので、
変に人間味のある人が出てきたら逆に不自然ですから、
この作品の世界観に合った人たちが登場している、
といえると思います。



すべて読み終えて思うのは、動物から学ぶべきことは
たくさんあるのではないか、ということ。
彼らはひっそりと静かに、一生懸命生きています。
「猛獣」と呼ばれるような種であっても、生き抜くために
一過性の獰猛さを見せるだけで、本来とても静かな生き物で
あるように思います。


何があっても、文句も言わず、嘆くこともなく、
与えられた環境を受け入れ、全身全霊で生きています。
人間みたいに、不安とか打算とか自意識とか、
そういう余計なものが入り込んでいなくて、
とっても純粋なんですよね。美しいなぁと思いました。



日常の喧噪を忘れさせてくれる、
心を静かで穏やかな方向に導いてくれる、そんな作品でした。



評価:★★★★
いつも彼らはどこかに (新潮文庫) -
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posted by yuko at 12:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本文学 | 更新情報をチェックする
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